incarnate





帰り道、好きな人と手を繋いで歩を進める。

ただそれだけで、嬉しくて嬉しくて。



あたしは今、世界で1番の幸せ者なんじゃないかって思った。





他愛ない話をしていると、木の陰から何かがこちらを覗いていた。


それは野生の狐だった。




よく見ると、足を怪我して動けないみたいで。




大丈夫、怖くないよ。


って、そっと手を伸ばして狐の足にお気に入りのハンカチを巻いてあげた。




少しは血、止まるかな?


心配して聞いたあたしに、好きな人は微笑みを返す。



優しいね。


そんな言葉と一緒に。




それだけで、あたしはまた嬉しくなった。




ずっと一緒だよ?


誓いを立てた聖夜、星空はやっぱり美しかった。





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