incarnate





ごめんね、夜。


ごめん。






あたしは倒れた夜に近づいていく。



けれどもう、それは人の姿をしていない。






あたしを幸せにするための、優しい嘘。


キミは───‥






懐かしい記憶が脳裏を過ぎる。


見覚えのあるハンカチ。




そこに横たわるのは、確かに夜であるはずなのに。


姿は何年前かに出会った、足に傷を負った狐だった。





夜は、キミは、あたしに幸せを運んでくれたんだね。



本来の姿は、仮の姿である人の時より、いっそう雪が似合う恋人だった。





.
< 8 / 10 >

この作品をシェア

pagetop