小さな恋【完結】


「大知も苦しいんだろうね。両親が離婚してお父さんと妹の3人で暮らしてるみたいだし」


すると、りっちゃんは溜息交じりにそう言った。


大知の両親が…離婚?


3人で暮らしてる……?


そんなの初耳だよ。


「何それ……。どういうこと?離婚ってなに?」


思いもよらない事実に、一瞬、頭の中が真っ白になる。



「お母さんが男作って出て行っちゃったみたいだよ?真依子、知らなかったの?」


「知らなかった……」


あたしは何も知らなかった。


大知がそんな大きな問題を抱えていたなんて。


その時、ふとある疑問が頭の中に湧きあがった。



「大知がサッカー部に入らないのってまさか……――」


「そうそう。お父さんは夜遅くまで仕事してるし、家のことは大知がやってるみたい。バイトと家事……両立すんの大変だよね」


「……そんな……」


目の前のりっちゃんの顔がグラグラと歪む。



サッカーは大知の全てだったのに。


サッカーの話をする時の大知は生き生きとしていて眩しいほどに輝いていた。


それなのに……大知がサッカーを諦めるなんて……――。
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