カベの向こうの女の子

彼女は口をへの字に曲げた


「うーん、だけど寝させてもらったのに、これ以上悪いし」



彼女がそう言うから俺は激しく首を振った



「いやいや、俺は全然大丈夫だし!」




俺は悪いどころか、彼女にここにいてほしいわけで



誘拐したのもそれが理由なわけで



悪いなんて感情、彼女にわかせる資格なんてないのだ




彼女は小さく笑った



「ありがとう。だけどやっぱり帰らなきゃ」



彼女はそう言って、 携帯をカバンにしまった



そしてカバンの横にあるチェックの赤いマフラーを巻く



帰る支度をしているみたいだ



「待って!やっぱりもうちょっとここにいろよ」





俺は慌てて、気づいたらそう言っていた




あまりにしつこかったらしく、彼女はさすがに驚いたみたいだった



何がなんでも部屋にいさせようとする俺に、不信感を抱いたかと思い、まずいことに気づいた



帰るって言ってるんだから、黙って帰らせろって思うよな、普通





「心配性なんだね」



彼女はクスッと笑う



俺もつられて苦笑いした


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