堕ちていく二人


その事で自尊心の傷付いた桂司は、初めて玲子に暴力をふるった。

それ以来桂司は玲子に対しては性的に不能になってしまい、夫婦の間に大きな亀裂が出来てしまった。

一度出来た亀裂は深まるばかりで、何時しか二人はほとんど会話さえしなくなっていった。

今朝桂司が玄関を出て行く時も、玲子はベランダに出てぼんやりと眼下に広がる琵琶湖を見つめていた。

土曜日なのに桂司が仕事に行くというのは嘘だと知っていた。

だが、玲子は何も言わなかった。

桂司が休日だというのにス−ツを着て出掛けるのは今回が初めてではなく、三年程前から月に2回はそんなことがあった。

2年前の雨が降るある夜、泥酔して帰宅した桂司がリビングのソファーにそのまま眠ってしまったことがあった。

桂司のYシャツの衿には真っ赤な口紅の跡が着いていた。

桂司の女遊びには薄々感づいてはいた玲子だったが、何も問い詰めようとはしなかった。

Yシャツの衿に口紅の跡を見付けた時も
「やっぱり…」
溜め息をつき、ただうなだれるだけであった。


(つづく…)


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