堕ちていく二人
裁判では数年間に渡り夫から暴力を受けていた事が考慮され、検察側の無期懲役の求刑に対して懲役15年の判決が言い渡された。
玲子は控訴することなく、拘置所から刑務所へと移送された。
季節は冬を向かえていた。
刑務所の鉄格子の向こう側では北風が吹き、粉雪がチラチラと舞っていた。
玲子は母親や貴之に手紙を書いた。
『お母さん、親不孝な娘をどうかお許し下さい。
苦労をかけて育ててくれたのに、本当にごめんなさい。
裕也のことをくれぐれもよろしくお願いします。 玲子 』
『貴之君、こんな結果になってしまって本当にごめんなさい。
夫を殺しておいてこんな事を言うのもおかしいけれど、私は今でも貴之君のことを心から愛しています。
出来る事なら貴之君とはもっと早く再会したかったです。
そうすれば私は平凡で幸せな人生を歩んでいたでしょう。