地味男子
「柴乃ちゃん」

 蒼井に呼ばれて蒼井のほうに顔を向ける。



 結構早くあたしの顔に近づいてきた蒼井の顔。



「…!?」


 あたしの唇と蒼井の唇が重なった。


「「「「きゃぁーーーっ!!!!!」」」」


 女子の黄色い声。



 何するの…?


 潤君が見てるよ。



 やめて……。




 そう思うのに動かないからだ出ない声。


 出てくるのは涙だけ。




「柴乃ちゃん、いこ?」

 無理矢理立たされてやっと動きそうになったからだ。


「……っ…」


 やっぱり出ない声。


 腕をひっぱられて連れてかれる。



 潤君のほうが温かかったよ。


 優しかったよ。


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