初恋
「何やってんの?てか誰?」


地の底から沸いてきたのかという低い声で誰かが言った



抱き合っていた私と先輩が声の方向に顔を向けた



母だ




時々カメラか何かで見ていたんじゃないかという位のタイミングで来る母



迷惑以外の何物でもなかった



「こんな夜遅くに男連れ込んで遊びなんてウケるんですけど。何?別れたあたしへの当てつけ?(笑)」



浮気相手と別れたらしく、機嫌が悪い



いいときなんて無いけれど



何も言わずに先輩の手をとって外に出た




「ごめんなさい、私がちゃんと把握してれば…」



先輩はずっと考えているような顔をしていた



「いや、いいよ。こんな夜中に押しかけた俺が悪いんだから。……大丈夫?」



大丈夫じゃないに決まっているのに



「大丈夫ですよ!…本当にすみませんでした…今度お礼を持って先輩のお家伺います」



「連絡待ってるね」



ヒラヒラとふざけて手を振りながら先輩はタクシーを停めて乗り込んだ
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