天狗様は俺様です!
 頭の中で整理するように考えをまとめる。



 ってことは、ナギを殺す以外の方法ってのがあのキスだったんだ。

 ふーん。

 なるほど……。


 って!


「何とんでもないことして消えてっちゃうのよあの人はぁ!?」

 思わず叫ぶ。


 ナギが言っていた“精神的苦痛”とやらが何のことか分かった。

 でも、分かったからってそれで良いわけじゃない。



 何だろう。

 ナギの死というデリケートな事柄を目の当たりにしたはずなのに、最後の最後がアレなせいか“やり逃げされた”という感じしかしない。

「ちょっとカイ! あんたも文句の一つでも叫んだら?」

 実際に被害に遭ったカイも、せめて文句でも言わなきゃやってられないんじゃないかと思ってそう言った。


「……」

 なのに、カイはまだ硬直したままで動かない。


「ちょっと、カイ?」

 あまりにも反応がないので揺さぶってみたら、カイはそのまま地面に倒れる。



 え?
 何?
 もしかして、この状態のまま気絶しちゃってる?

 そこまで精神的に来ちゃったんだ……。



 その事実に、私はカイがあまりにも哀れで泣きたくなった。



 ナギが現れて消えるまではほんの数時間でしかない。


 その数時間は、竜巻のような出来事で……。


 そして、竜巻と同じ様にナギはあっさりと消えた。


 その所為だろうか。

 何だか彼が死んだということに実感が持てない。


 しばらくしたら、またひょっこり出てくるんじゃないかと思ってしまう。


 ありえないことだと分かってはいるけれど……。



 私はカイが意識を取り戻すまで、空を見上げながらナギのことを考えていた……。




《第七話 白鬼 【完】》

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