*coffret a bijoux*(SS集)
重力に逆らって、フワリと
体が浮き上がる。

――柊弥に抱きかかえ
られたんだ。



「荷物、先に空港に
送っといて正解だったな」



軽やかに言って、柊弥は
あたしをかかえたまま再び
走り始めた。



あたしは振動に声を
弾ませながら、



「やだちょっと、
恥ずかしいわよっ」



こんな朝の往来をお姫様
抱っこされてって……。

平日だから、通勤に向かう
人達が目を丸くしてこっち
見てるじゃない。



「仕方ねーだろ。
お前は自分じゃ走れないん
だから。

飛行機、乗り遅れたいのか?」



「の、乗り遅れたくは
ないけど……!」



「んじゃ、黙ってオレの
首につかまってろ」
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