恋愛温度、上昇中!
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それまで会話なんて耳に入ってない。
いや、無意識にそれを拒んでいただけなのかもしれないけど。


落ち着け、高見紗織。


酔っているんだと思いたい。あたしが今惑う理由を見つけて、肩を並べるこいつに対しての感情を自覚した所で、この状況には何も変化はないんだから。





「……私達一緒に暮らしてたんです」



ああ、もう。


会話なんて、まるで耳に入ってなかったのに、どうしてこんな簡単に、重要な部分だけを取り入れるのか。
柔らかい蓮井さんの声にあたしはどこかフワフワした感覚を現実に引き戻される。


「ね、司さん」


彼女が揺れる度に、甘い香水の匂いが漂う。
 無意識に一度行った事のある関谷の部屋が頭によぎって、片隅まで思い出そうとするのに、何も浮かばない。


ただ、あの日の、関谷だけが、あたしの記憶に残っていて、


「…優菜」


関谷の低い声は彼女の名前を呼んでそれ以上の会話を遮った。


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