恋愛温度、上昇中!
「清々したわよ。…幸せになればいいわ」
祥子はあくまで自分の言いたい事が『結婚』そのものに対してだと言い張る。今まで、結婚、なんて言葉自体出てこなかったのに。という言葉は飲み込んだ。
「そうね。あんた以外と幸せになれるんならそれに越した事はないわ」
彰敏程、一途な男、珍しかったから。
祥子に何度目かの彼氏が出来た時、相変わらず祥子に思いを寄せる彰俊に呆れて、『諦めれば?』なんて言った私に、
『うーん。無理、かな?愛が溢れてるから』
言い切った彰俊が無邪気に笑うから、私、愛が溢れてるなんて思った事ないな。と高校生ながら思わずにはいられなかった。
勿論、これから先も思わないと思う。
彰敏のことだから、結婚する相手にもとめどなく愛を囁いているんだろう。
あの頃、私の身近で、強烈な恋の在り方を見せてくれたのは彰敏で、変わらないものなどないと分かっているのに、寂しさが風のように胸を撫でた。