少年少女リアル
第五章 迂回の後
 夏深し。
木々はまだ郁郁青青としていたけれど、途切れ途切れの蝉時雨が晩夏を思わせる。いや、節季ではもう秋か。

あっという間に夏休みは終わってしまった。とは言っても、まだ八月。
最近では、どの学校も授業時間の不足を補うために、八月から二学期が始まるのが一般化している。進学率の高いこの高校もそうだ。

二学期が始まり、一度も向井さんと口を利いていない。いや、あれ以来だ。

もちろん、僕から声を掛ける事はないし、あれほど冷語を並べたのだから、彼女から話し掛けてくる事はもうないと思う。


きっと、これで良かった。

頭の中はぐちゃぐちゃで、強制的に僕の理性が片付けていく。
不納得な事も全て、「仕方のない事」として処理していく。

必要のない遠回りをしただけだ、と。
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