地獄からのメッセージ
1章  潜入
 



朝から雨が降り続いている。


窓の外を覗くと多摩川の流れが霞んで見える。


『日曜日だと言うのに,何処にも行けないぜ。』


 彫りの深い彼の目は怒っているでもなく,ぼんやりと空を見上げているだけである。


元々タイに在る,日垣電機の工場でコンピューターソフトを作っていたが,3ヶ月前に日本に帰国して来て、今は小さな電気屋の店員をしている。


その当時、タイは政権問題でかなり危ないと言われていたが、その為に大変な目に合ってしまった。


 中山 丈治 昭和40年11月11日生まれ

昭和59年 

神奈川理大付属高校機械工学科卒業後,ストレートで東京工業大学の精密機械科に合格した。


 昭和63年

卒業をして22才でタイに渡り、日垣電機のタイのチェンマイ工場でコンピューターソフトを作る。


 平成3年,国境沿いでクーデターが起き,反乱軍と政府軍による政権抗争に巻きこまれた。


その時怪我をしたが,地元の女性(チャウイ-)に助けられる。


彼女の父は政府軍のリーダー,ロング大尉であった。


彼女のお陰で一命は取り留めた。


その後、身を守るために銃の扱いを教わり,徐々に回復していった彼は、その後ロング大尉の薦めも有って彼の部隊の仲間達と共に体を鍛えた。


そこでは,世界各国の格闘技からサバイバルに必要な能力迄身に付けさせられた。


元気になった俺は,そこでの2年間のお礼を言い、彼等と別れた。

 

 平成5年に一旦,チェンマイの工場に戻るがクーデターの巻き添いをくって完全に倒壊してた。


 仕方ないので,日本に戻ろうとしたが、空港閉鎖の為バンコクに留まる事を余儀なくされた。


そこで,政府の要人のランビット総督と出会ったのである。

 ランビット総督を狙う反政府軍の1人が空港で彼の命を狙うが、それをたまたま察知した俺が、彼を庇い相手を倒したのである。


 これも、全てあの2年間の成果であった。



 その後,俺は腕を買われてタイ政府の傭兵となったのである。


この内乱の裏には日本の企業が絡んでいると言う情報を、ある時耳にした。


そのある企業というのが,どうやら日垣電機と関係が有るらしいと言うのである。

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