失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】

メール




珍しく兄から携帯にメールが来た

兄は大学に行きながら

夕方からバイトで家庭教師をして

最近は帰りが遅い

メールが来たのは夜も10時を過ぎ

もう帰宅する頃なのに…

メールには簡単に一行

こう書いてあった

「電話して 今すぐ」

僕は胸騒ぎがした

何かはわからない…でもおかしい

兄は僕にメールをしない

メールが来るのがおかしい

内容はもっと

いやな予感をぬぐうために

急いで居間から自分の部屋に戻り

兄の番号にかけた



電話はすぐつながった

「ごめん…迎えにきて欲しい」

「ねぇ…兄貴…どうしたの?」

「体が…動かない…説明はあとで」

「ねえ!どうしたんだよ!」

「とにかく…迎え…よろしく」

「迎えって…どこに?」

「ああ…そうか…言わなかったっけ

○○駅まで…北口のベンチのあると

ころ…わかるかな…本屋の前の」

「わかった!すぐ行く」

自転車で10分ぐらいのところだった

いつもの最寄り駅じゃないのが

気になった…体が動かないって

なにがあったんだよ?

兄の言葉では全く予想がつかないそ

の事態を僕は考えたくなかった…

発作が出そうだ

「母さんらには言うなよ」

なにかあったことは間違いない








< 14 / 360 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop