桜空2
「こちらになります」
慎に手紙を手渡された。
「では、失礼致しました」
慎はそう丁寧に言うと、部屋から出ていった。
…誰からかしら……?
私は手紙の封筒の裏を見てみる。……不思議なことに名前がない。
「変な手紙ね……」
私はそう呟くと手紙を開けた。
そして中身を読み始めた。
「 姫様へ
突然のお手紙、お許し下さい。
私の名は、佳代と申します。
加賀に住む18の女です。
この度はあなた様にお願いがあり、手紙を書かせて頂きました。
お願いというのは
あなた様の婚約者、水野空を私にお譲りして頂きたいのです。
私は長年、水野を思ってきました。忘れることなど出来ません。
お返事は下の宛先に下さいませ。お願い致します。
佳代 」
な……に…?
なんなの、この手紙は……
もしかして、空が言ってた元恋人って…
彼女のこと……?
空は……
この“佳代'という女性と恋人だったのね。
でもどうして、空を譲ってくれなんて…
そんなこと…
出来るわけないじゃない。