─侵食─悪魔のような男
差し伸べた手をさっと戻し、脂汗を出したマスターが「そっそれがいいね…私は少し気分が悪いし」と額に手をやる。
「でも…悪いですよあたしなんかの為にそんなことっ」
「君だからだよ…心配なんだ…頼むから送らせて?何かあってからじゃ遅いし…ねっ?」
その整った顔に、ふわりと優しい笑みを浮かべて劉兒はユウリを見つめた。
「そうしなさい、天城さんは信用できる人だから…」
「わかりました…じゃあお言葉に甘えていいですか?」
マスターに言われて返事をしたあたしは、天城さんに送ってもらうべく喫茶店を後にした。