How to win the Game
単位を満たすためだけに。


「ねぇ、何が楽なの?」


正午を回った食堂は、たくさんの人でにぎわっている。


私たちは、窓際のテーブルで向かい合って昼食を食べながら、


履修要項とにらめっこしていた。


まぁ、にらめっこしているのは私だけなんだけど。


「まったく、とっとと早く履修しないから」


怒ったようにそう言う私の目の前に座る親友は、


今年の必修授業だけに丸をつけた要項を既に閉じている。


「だってさ、1年生の時って遊びたいじゃん?」


「もう4年生ですけど」


「・・・」


私、川崎佳子は、大学4年生。


就職困難の今の時代、


他人より早く就職先を見つけてしまった超ラッキーガールではあるものの、


実は、卒業要件である、


一般教養の授業を4単位分、つまり1年間分履修していなかったのだ。


卒業しなければ、就職はできない。


そのためにも、確実に単位を取れる授業を履修しないと。


「ねぇ、どれが楽だった?」


「・・・どれも楽じゃないから」


親友の咲の言葉をさえぎり、私は続ける。


「あ、ねぇ、そういえば、昔誰かが、哲学って超楽って言っていた気がするんだけど」


そういえば、そうだ。


昔、誰かが、哲学の授業が楽だって言っていた気がする。


簡単なレポートを毎回提出すれば、それだけで単位が取れったって。


「・・・ねぇ、それって」


「よし、これに決めた」


私は、そこにマークをつけて、履修要項をたたんだ。


「よし、これで心置きなく卒業できるぞ!」


私は、伸び始めているラーメンの中に箸を突っ込み、思い切りすすった。


「・・・はぁ」


咲のため息を、私は聞き逃していた。


まさか、この先に、思いもしない展開が待っていたとは。





< 3 / 142 >

この作品をシェア

pagetop