唇を塞いで



静かな屋上にのんちゃんの声は恐いほど響いた



「切り捨てるっていうのはそんなに簡単じゃないよ
それってすごく悲しいことじゃない?
切り捨てられるものはしぃちゃんにとってそれだけの価値でしかなかったってこと」



のんちゃんは大きな瞳にたくさん涙を溜めて、

でも、流さないように唇を噛みしめていた


「ねえ、私や坂井くんは切り捨ててしまえるほどの存在?
違うでしょ?
私はいいよ、しぃちゃんが幸せなら会えなくても。
でも、坂井くんは違う」





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