【企】携帯水没物語

親愛なる東佳へ

いきなり死んじゃってごめんね
びっくりしたよね
このケータイは東佳にあげます
わたしが拾ったの
怖いものじゃないよ

それからね、東佳

“わたしって、何?”

考えてみて
答えがでたら教えてほしいな
じゃあね東佳
いままでありがとう
東佳大好きよ
バイバイ

里奈


結局、里奈がこの携帯電話を何に使っていたのかはわからない。

里奈が死んだ理由も書いてない。

わたしはケータイの電源を入れた。

怖くはないが怪しい。

使うのは躊躇われたが、好奇心の方が数段上だった。

中のデータは一つだけ。

名前のところに“先生”と書かれたアドレスのみ。

先生、誰だ?

里奈の口から聞いたこともない。

学校の先生の誰かだろうか。

何の根拠もないが、それは違う気がした。

この状況で出来ることは一つだ。

いや、本当は一つではないのだろう。

警察なり親なりに相談すべきなのかもしれない。

その選択肢だってあったのだ。

だが、わたしはメールボックスを開いた。

アドレス帳から例の“先生”を呼び出す。

もし、もしつながったら―…期待している。

もちろん不安の方が大きいけれど。

To先生
あなたは先生ですか?

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