僕のディスティニー!\(^o^)/
出会いだけはほんと理想でした。
列に並ぶ人達は、皆僕を含め大きなリュックを背負い、汗をふくためのタオルを首から下げている。メガネ着用率は軽く七十%を越えていそうだ。
この何かと親近感を覚える集団は、いわゆるオタクだ。本人がいくら否定しようとも、第三者の目からにはそうとしかとられないだろう。
最近はオタクの恋愛模様を取り上げた本や映画がヒットし、メイド喫茶が有名になった。
しかし僕らみたいに真夏に行列を作り異様な熱気と臭気を放っている真性の末期オタクは現実には気持悪いだけだろう。
それでいいのだ。元々オタクは光の届かない陰で他人の目など気にせず自分の趣味に没頭するのが本来の姿だと思う。
僕は一生童貞でいて妖精になる覚悟は出来ている。そうやって生きて、世間元い女性から相手にされなくてもなんとも思わない。
丁度今日みたいに暑い夏の日、中学二年生の僕が何も知らずに同人誌を手にとってしまった時から運命は決まっているのだろう。
運命のあの日と同じ人を狂わせるような暑さに、限定発売のギャルゲーの列に並びながら思い出していた。

「助けて下さい」
不意に誰かが僕の懐に飛込んできた。汗をかいたオタクだらけの中にかおった、透き通るようなシャンプーの甘い匂いが暑さにぼうっとしていた僕を呼び戻した。
「うわっ!」
僕にすがりつく正体を確認した途端、パニックに陥った。一生縁がないはずの女性が、こんな汗をびっしょりかいて、ギャルゲーを買うために行列に並ぶ僕に密着しているのだ。
「助けて、追われているんです」
顔を上げたその娘に、息をのんだ。心臓が口から飛出すんじゃないかと思った。
その娘は、今僕ら(オタク)のなかで神がかり的な人気のアイドル、あやたんと同じ顔をしていた。
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