あいらぶゆー【短】
あいらぶゆー



目を開けると
そこにあったのはもう一つの寝顔だった。


驚いたけれど
驚かなかったのは

今日が初めてではなかったから。



放課後の図書室。

「宿題をしていく」というのを口実にして
彼の部活が終わるのを待つ。

暗くなってから帰るのは
危ないとか

そんなフェミニストみたいなことを言って
あなたがここに寄るのは計算済み。


同じ中学から
同じ高校に入って
同じクラスになった。

家は近くはないけれど、
県内各地から生徒が集まるから
それから言ったら、私と彼の家は近いほう。

隣りの駅だしね。


学校から駅までが徒歩十分。
自宅の最寄り駅までが電車で三十五分。

電車の待ち時間を考えても
一時間弱ってところ。


街灯はたくさん立ってるし
危ない事件の話とか聞いたことないし
たぶんそんなに危険なことなんてない

……と、思ってる。



それでも彼がこうして部活終わりに
図書室を覗きに来て

寝てる私を待って一緒に寝てしまってると言うことは

たぶん私のことは「キライ」ではないと思う。


むしろ心配してくれてるのだから
「中の上」以上ではあるはず。



でもね、

私は「上の上」になりたいんだよ――。


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