透明な翼

誕生日

「……おはよー?」

「あ、幾斗君! そろそろ起こしに行こうと思ってたの」

……何で翠が僕の家に……

って、あぁそうだったそうだった。

僕が翠を引き取ったんだった……。

「晩ご飯出来てるから、早く食べちゃって」

「ふぁ……サンキュー」

欠伸交じりに言って早めの夕食を胃に流し込んだ。

仕事行くの面倒くせー。

僕はスウェットからラフな格好に着替えた。

「んじゃあ行ってくるわー」

「いってらっしゃい!」

翠の笑顔の送り出しを受けて家を出た。




「よぉ幾斗、どーよ翠ちゃんとの同棲は?」

店に入るなり貴史が詰め寄ってきた。

つーか、

「別に同棲とかじゃねーから」

ただの共同生活だっつーの。

「一緒に住んでんだから、同じことだろ?」

はぁ~もうどーでもいい。

「じゃあもうそれでいいよ」

後ろで騒ぐ貴史を無視して、ロッカールームに入った。

制服に着替えて部屋を出ると、廊下の壁に寄りかかっている店長に出くわした。

「おはよーございまーす」

「はよ。 で? 平岡はどーだ?」

「店長まで貴史と同じようなこと訊かないで下さいよ……」

「マジかよ!? 最悪だぜー」

店長は笑いながらたばこに火を点けた。

「翠は元気ですよ。 幸い大事には至っていませんでしたし」

その前に僕が飛び込んで止めさせたからな。

煙を吐き出しながら店長が言った。

「それ聞いて安心したよ。 今後俺の店であんな暴挙は許さん」

ははっ、ホント見た目と違っていい人だよ。
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