――Rain
どうやら腕がスパッと切れているらしい

親の仕事の関係で医学をちょっとかじっていたことがあるのでとりあえず他所の家よりは充実した救急箱から止血の用意を始める

転んでこんな大怪我になるか

「アンタ、本当に変だよね」

鈴がおとなしく応急処置を受けながらポツリと話す

変なのはどう考えてもお前だ、とギリギリで飲み込んだ

うちの猫はへそ曲がりなんだ

「俺、利き腕なんだよコレ」

幸い傷はそこまで深くない

きっと寸前のところでうまくかわしたんだろう

「今なら上手く銃が握れない
俺に銃突きつけるなら、今しかないよ?」

思わず手が止まってしまった

上目遣いで、こちらの出方を伺うようにして鈴は言う

喉でゴクリとつばを飲み込んでみた

「ねぇ」

鈴の声は今日一段と甘い気がする

妖艶な響き

野良猫ほど可愛く思うのはどうしてだろう


「…なんだよ、怖いのか」

こちらの言葉に、鈴は一瞬だけ瞳を大きくして眉をひそめる

「なにが」

甘い響きは消えた

突き刺すみたいな、凍ったような声

これもまた 嫌いじゃない

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