――Rain
表情からは相変わらず気持ちが感じ取れない

しかしその言葉で鈴なりの世渡り術なのだと感じた

きっと今まで生きてくる中で覚えたのだろう

体と引き換えに睡眠と食欲を満たしたのだろう

三大欲求だけで生きてきたのかお前

本当に野良猫かお前

「別に鈴にそんなものは強要しないよ」

かぶりを振りながら、大きく息を吐いて動揺を落ち着かせる

まぁ、鈴のこの容姿と体型なら無理も無いのか


「…猫みたいな生活してきたんだな」

鈴はチラリとこちらを見て床に目を移した

貸した白いニットは少し大きかったらしい

「猫は、お世話になった飼い主に爪をたてるかな」

ポツリと言葉が響いた

鈴の声は耳に心地よい

「え…?」

言葉を求めるように聞き返す

「猫は、飼い主を殺したりしないよ」

鈴が温度の無い笑顔を貼り付けて笑った

鈴が猫みたいだと思うことに変わりは無い

お前、何人も眠らせてきたんだな


目の前に居るのは血を隠している猫に違いなかったが

不思議と嫌悪感はなかった

恐怖も、無い

いつも不機嫌な横顔が少し寂しげに感じたからだろうか


「…雨、やんだな」

窓から空を見上げると空気だけが潤んでいた

太陽は相変わらず雲に隠れたままだったが先ほどのような雨の心配はもう無さそうだった







この気持ちは、欲情とは少し違う気がする
< 9 / 18 >

この作品をシェア

pagetop