ダークエンジェル

リュウは父がテニスに興味があるとは思わなかった。

国体に出るのはあくまでも水嶋のため、と思っていた。

それなのに今、
確かにカイルと一緒に応援に来る、と言った。

カイルが前向きな心になっただけでも嬉しいのに、

2人で応援に来ると言っている。

2人で自分を見に来る… 

中学、高校といろいろな行事があったが、

それらは大抵休日だった。

父に言えばあいつらが一緒に来る、と思ったリュウは、

一度も連絡しなかった。

父子家庭の父は忙しいから、
というスタンスで来ていた。

しかし、心の中では、
父には来て、見てもらいたかった。


2人が来てくれるのなら… 
絶対に頑張らなければ、
先輩にも頑張ってもらわなければ。

たった一言で、
リュウの国体への気持が大きく飛び跳ねている。



そして、カイルの気持が整理できた事で… 

医務室で待機していた医師団の手で早速手術が行われた。

他の神経に気をつけながらの切断手術は緊張を伴うものだったが、

幸い結果は思った以上の成果だった。


しかしリュウは、
戻って来たカイルを見ていると、

右足の膝から無くなったカイルの足を
想像するだけで悲しくなっていた。

勿論、何も言わないが父も同じ思いだろう。



「手術の経過を見てから義足をつけるそうだ。

それまでは一緒にいような。

一番微妙な精神状態になるらしい。」



信秀は父親らしくリュウに今後の事を話している。


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