ダークエンジェル

「分かった。
それで父さんはあの人たちの骨、どうするの。」


「うん、どうしようかなあ。
あの結婚届は無効になっているし、
血縁関係も全くないから先祖の墓、というわけにはいかない。

あの墓地の隅に小さいものを建てようか、と思っている。

美由紀も最後にはお前の母親のような心境になっていたようだし… 

4年も家族として暮らしていたのだから… 
どうだ、だめか。」


「別に… 僕に聞くような話ではないよ。

僕は初めから認めていなかったんだから。
父さんの気の済みようにすれば。」



リュウの言葉は淡白だが、水嶋は違った反応だ。



「リュウ、それが良いんじゃあないか。
僕は会ってないけど、
その子たち、きっとお前が好きだったんだよ。

お前、なかなかモテるからな。

義母さんもお前の事を気にしていた、
それは僕も感じていました。

僕は会って話をしていますから… 
ええ、リュウより親しく話しましたから。」


「美由紀も水嶋君がいるから安心だ、とか言っていた。

あの仏間に… やはり小さい仏壇を買って弔ってやろう。

美由紀に何があったのかは分からないが、
とにかく家族だったから。」



と、そんな家族の話に水嶋が当然のような顔をして… 

塾の時間だ、と言って帰っていった。




「彼は高3なのに、よくお前に付き合ってくれていたなあ。」


「だって、僕、クラブを頑張っているから、
先輩、嬉しいんだよ。
まだ国体がある。

うちからは僕と先輩だけエントリーしているから、
先輩、張り切っているんだ。

だから勉強はできる時に頑張る、って。
僕、先輩が3番目に好きなんだ。」


「3番目… 一番目は誰なんだ。」


「もちろん父さんだよ。
二番目がカイル。
だから先輩は3番目。」



と、無意識にカイルの名前を出してしまったが… 

父は何も感じなかったようだ。

友達の一人と思ったのだろう。
< 88 / 154 >

この作品をシェア

pagetop