もしも愛が嘘ならば
『…一ヶ月』
わたしの前にしゃがみこんだ先生は、カレンダーを指差しながらそう言った。
『俺、あと一ヶ月でこの病院から居なくなんの』
綺麗で細い、見とれてしまうほどの指に
わたしの髪を絡ませる。
「…早く…いなくなればいい…っ」
止まない鼓動。
どうしようもなく、胸が苦しい。
『一ヶ月で十分だ』
「…は?」
どんどん近づく綺麗な顔を
背けることさえ出来ないの。
『俺がお前を助けてやるよ』
唇が重なりそうで重ならない。
先生の吐息が、大きく胸を鳴らしてみせた。