スキトキメイテキス【BL】
「水野さん、疲れてるんじゃないんですか? 僕なんかに構ってる暇なんて無いんじゃないですか?」
「急にご機嫌ナナメかよ。急いで帰る用事でもあったのか?」
「用事なんて無いですよ!」
「じゃあ黙って喰え」
テーブルに頬杖を突いて、俺様水野は口を閉ざして窓の方へと視線を送る。
僕は、もやもやした気持ちのままケーキを口に運ぶ。
静かな室内にはフォークとお皿のぶつかる音だけが響いて、そのうち、食べ方が汚い、とかって怒られるんじゃないか、とか。
何も言わずに居るのはもしかして疲れて寝てしまっているんじゃないか、とか、そんなどうでもいいことばかりが頭を過ぎる。
そもそも何で僕なんかにケーキを出してくれたんだ?
新商品の試食?
こんな時に有り得ないだろ。
店には出さない、って言っていたし。
そうか、分かった。
彼女に出す前にたまたま居た僕で毒味……なんてそれこそ有り得ない。
俺様水野が失敗した物を他人に食べさせるとか、他人で試すとかするはず無い。
いや、単に僕への嫌がらせならあり得るかも知れないけど……考えすぎだ。