汚レ唄
「先輩?」
「麻緋さんと蒼は似てるかもしれないな」
今はそんなことを言ってるんじゃなくって……会わないで欲しいんです。
「でも、麻緋さんと会わないなんてできない。
約束したから」
先輩のハッキリした口調は、迷いのない口調で、俺の心は悲しいくらいにしぼんでいく。
「約束ってなんですか?」
「それは内緒だけど、会わなきゃいけないんだ。
だから蒼の頼みは聞いてやれない」
先輩は背を向けると、そのまま歩き出そうとした。
1歩1歩、先輩が離れていく。
「……今、もし、麻緋があんたと会ったら、きっと音楽を辞めてしまうから」
「え?」
これは、俺が本当に心配していることだった。
先輩は振り返り俺を見ると、また、近くに戻ってきた。
麻緋は、先輩がいなくなって、先輩と繋がっていたくて音楽を……歌を歌っているんだ。
だから、もし、先輩と会ってしまったら……
きっと麻緋は歌うことなんて辞めてしまうだろう。
1人の女として麻緋は先輩に恋をして、恋愛することに夢中になるだろう。
そんなの、俺が嫌だ。
麻緋の歌を1番近くで聴いていたいのに。
麻緋は歌を続けなくてはいけないのに。