堕ちた天使と善良な悪魔。

ほしにねがいを。

「……寒い」

 気がつけば、僕は夜の公園で眠っていた。

 札幌の秋を甘く見ていたようで、気温はかなり下がっているらしい。僕は上着をしっかりと前で合わせ、マフラーに顎をうずめた。

 夜の公園は、好きだ。昼間に見るのとでは全く違う景色がそこにあるから。僕の住む月見が丘は都市の中心から一時間ほど離れた場所にあり、高校に通うには確かに不便ではあるのだが、その分公園や自然が多い。

 ひっそりと呼吸する夜の公園の木々は、さらさらと葉擦れの音を立てている。冷たさを孕んだ空気は星の光を真っ直ぐに伝え、僕の目を楽しませてくれる。

 そんな静かな夜に、僕は来ることのない誰かを待ち続けていた。
 誰を待っているのかは、自分でもわからない。けれどそこにいれば逢える気がした……というよりは、家の中にいるよりはマシだろうという、その程度のことだ。

 期待はしていない。友人達と適当に笑い合い、留年しない程度に授業に出て、余計な心配をかけないよう家族には良い息子を振舞う――そんな平凡でありきたりな日常は、きっとこの程度の心がけでは変わってはくれないだろう。日常は、それほどまでに強固なものなのだと思う。

 傍らに置いてあった缶コーヒーを手に取り、口をつける。放っておいたためか、だいぶ温くなってしまっていた。

 ささやかな自然の中で、ベンチに座り、月と星を眺めながらコーヒーを飲む。ロマンチストだと笑われるかもしれないが、僕はこの穏やかに流れる時間をそれなりに愛していた。
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