青薔薇
また…聞こえた。


紀紗は声の聞こえた方へ、頭をぐるりと動かした。

蒼い瞳を瞬かせながら、ゆっくりとそちらに近いていく。
まるで冷気のような殺気を放ち、ゆっくりと。

「ぁ……ぁぁ……。」

言葉を口走ってしまった男は、
紀紗の放つ殺気で言葉がないほど怯えている。

"コツリ"
うつむき加減で男の前に立つ紀紗。
その瞳はぴったりと閉ざされている。

ゆらり。

紀紗がにわかに動いた刹那、

双眼の青薔薇は開花した。


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