好きになってもいいですか
1年のはじまり
「平成○○年度第一学期始業式を始めます。」
僕は植村洋太、教師になって2年目、2回目の新年度を迎えた。大学4年のときに、ラッキーにも採用試験に合格し、卒業してからこの学校で働いている。地元ではあまり評判の良くない学校だが、伝統があり、意外と素直な生徒が多い。
大学を卒業したばかりだから、生徒と歳が近く、仲良くやれると思った1年目は、生徒にバカにされたりして、授業にならないことしばしば。それでもなんとか1年乗り切った。
(今年は去年みたいにならないようにしないと)
と決意を固めた。
「以上で、始業式を終わります。次に新クラスの担任、副担任の発表をします」
一年生から順番に発表されていく。その都度、生徒からは歓声と悲鳴、驚きの声が上がっている。
「次に二年生・・・・・・」
二年生も順番に発表されていく。
「二年A組担任、寺岡先生。副担任植村先生」
担任の寺岡先生と一緒に、自分が副担任をするクラス前へと向かった。すると生徒から
「植村かよ〜」
「マジ大丈夫かよ〜」
と、不満の声。
(うるさいなあ)
なんて思っていたけど、去年の様子じゃ仕方ない気もしていた。
「二年B組担任、荒井先生。副担任山本先生」
隣のクラスが発表になると、
「マジかよ〜いいなあ」
という声。さらに女子からも
「山本先生いいなあ。植村キモいし、最悪」
と言われる始末。確かに山本先生は保健体育の先生で、イケメン。背も180以上あって、サッカー部の顧問、しかも選手としては元Jリーガーときていて、ファンクラブまである。
かたや自分は、高校までテニスをしていたが、その後受験のストレスで激太り。もちろんイケメンではない。しかも、理科の教員ということで、オタクっぽくみられてしまっている。

(お前等くらべんなよな)
と心で思っていても、自分自身も負けを認めていた。


「以上で担任の発表をおわります。各クラス、新しい教室に移動して、待機しているように。それでは解散」

すべてのクラスの発表がおわり、生徒たちは新しい教室へと移動して行った。

(こんな始まりじゃ、今年も大変だな、きっと。教員やめちゃおっかな)

なんて考えながら、教室へと向かった。
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