桜、月夜、愛おもい。


「い、嫌とかじゃなくて…その…えと…」


視線を泳がせて口ごもる。


私が恥ずかしさを堪えて自分から手を差し出すか。

それとも、凛桜が諦めて手を握ってくれるのを待つか。


できれば後者の方がいい。


でも結局は、私がいつも先に折れてしまう。

だって


「ほら、早く」


こんな優しく言われたら、断る術なんてないもの。



「ぅ…」


おずおずと手を出す。


凛桜は唇の端を上げると、迷うことなくそれを握った。





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