桜、月夜、愛おもい。



月を見てると思い出す。


私は、小さい頃に泣いた記憶がほとんどない。

ただ一度だけ、今でもはっきりと思い出せる。

頬を伝う涙の冷たさと、あの胸が苦しくなる感覚。


それは、物心ついてから最初で最後の、私が両親の胸に縋って泣いた夜。





「凛桜っ!!」


いつもの公園は静かで、並ぶ電灯がぼんやりと辺りを照らしている。

凛桜は振り返ると、完璧な微笑みを返してくれた。


「遅くなってごめん」


そう言って見上げると、「気にしてない」と笑う。

あまりに綺麗すぎて、クラクラした。



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