桜、月夜、愛おもい。
でも、今日の私は運が悪かったみたいだ。
ガチャ…
ビクッ
リビングのドアが開き、あの人が顔を出した。
「あら、帰ってたの」
二階に上がろうとしている私を見つけて言う。
私はその声に身体が震えた。
「…あ、きな…さん」
喉が張り付いてしまったみたいで。
呼吸がうまく出来ない。
「こんな時間まで、どこ行ってたのよ?」
そんな当たり前の質問でさえ、私には心臓を縮ませる材料になる。それでしかない。