桜、月夜、愛おもい。
電話を終えて、咲菜が私の方に来た。
その顔は暗くて、何かにショックを受けたようだった。
咲菜は、キョロキョロと部屋を見回して首を傾げた。
「明菜さんは?」
「具合悪いみたいだったから、部屋にいる」
「そう…。ちょうどよかった。話があるの」
深刻そうな顔で、私をソファーに座らせる。
咲菜は私の向かい側に座って、私を見た。
「あのね?お母さんが公園の近くのおばさんに、電話で聞いたらしいんだけど…」
‘公園’というのは、たぶん凛桜がいるところだ。
胸が、小さくざわついた。
咲菜は眉を寄せて俯く。
「凛桜くんの桜の木…折れたんだって」
きっとこの瞬間から、別れへのカウントダウンは始まっていた―――。