Bitter Sweet Kiss
でも、ヤマトもカノジョも待っていても戻ってくる様子はなくて、痺れを切らしたわたしは腰をおろしていた芝生に手をついた。

帰っておいでってことは伝えたんだし、先に戻っていようかと立ちあがる。

スカートについた草を手ではらい、なんとなく辺りを見渡した。

懐かしい景色。
ここは、あの頃のまま変わってない。

さっきした、お母さんとの会話のせいかな。ぼんやりと眺めていたら、忘れかけていた記憶がよみがえってきたの。

重なる景色、そして面影 ――


「……やっぱりやめた」 


忘れかけていたなんてウソ。結局この4年間、ひとつの恋もできないでいるんだ。

不意に胸の中を支配した言いようのない感情に、慌てて蓋をしようした、その時だった。




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