峰岸の恋する宇宙-そら-(短編)
薄暗い照明、静かに流れる有線の洋楽……。


静かな…時間……。



「永山が東京に居るのは知ってたんだ」

峰岸は、コロナの瓶を指で弾きながら話す。


「そうなんだ…」

「うん、永山メアド変えただろ?」

「……うん」



あたしなりの、決心だったんだ。


峰岸とはもう、連絡を取らない。



子供だったあたしの、精一杯の……決意。



「アメリカに行ってから何度か帰郷したんだ。一度目の帰郷で永山んちに行った時に、永山のお母さんが東京だって教えてくれた」



あたしんち……行ったんだ……。




「住所教えてもらったけど、手紙も出さない方がいいのかなと思ったんだ」

「……どうして?」

「メアド変えてたからさ、俺も突然アメリカ行くなんて伝えたから…永山、怒ってたんだろ?」






怒る?




怒ってなんか、いなかったよ。



苦しかったんだよ。



峰岸は、あたしよりも先に進んでく。


遠く遠く、離れてく。



その距離を埋められない自分。


子供だったあたしに、峰岸の見る宇宙は……見えなかった。




峰岸は悪くないんだよ?



あたしが、弱かったんだよ。
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