初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】
メイドとご主人様のお約束
 あれから1週間が経った。

 短い3学期が終わって、学校は春休みに突入。

 長期休暇はあたしの絶好のバイト期間で、毎日シフトを入れてもらい、あのお店でメイドとしての日々を過ごしていた。

「いってらっしゃいませ、ご主人様」

 レジを終え、いつものように頭を下げてお客さんのお見送りをしていると、

「さくらちゃん」

 店内にいる別のお客さんから声がかかった。

「はい、ご主人様」

 あたしはいつもの笑顔ですぐさま呼ばれたテーブルに向かう。

 あたしを呼んだのは、2ヶ月くらい前からこのお店に来るようになって、今はすっかりと常連さんになってくれた人。

 自分は大学生だって言ってくれた人で、名前は――確か、大山忠さん、だったっけ。

 あたしと同じような身長で銀縁眼鏡をかけ、長髪に少し小太りで、自分のことを「自分」と言ったり、言葉の端々にちょっと「個性」が垣間見えるような人だけど、個性的な人は他にもたくさん来ているから、あたしは別段なにも思わずに接客をしていた。

「おまかせパフェ、おかわりで」

「もう3杯目ですよ? ご主人様。体調は大丈夫ですか?」

「いいの、いいの。自分はさくらちゃんのパフェが大好物だから」

 まぁ――お店にしてみればこれも商売だから、それ以上の制止はせず、あたしはにこやかに頷き、カウンターに入ってパフェを作り始めた。
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