初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】
 父と母は駆け落ちをしていた。

 母の家は、矢代家という旧華族の流れを汲む名家らしく、あたしでも名前くらいは知っている企業をいくつも経営している。

 父の家は、あたしもよく分からない。

 早くに両親を亡くし、バイトをしながら大学に通っていた、ごく普通の一般人だってことは教えてもらった。

 そんな父と母が留学先で出会って恋に落ちた、ってところまでは知っている。

 2人の結婚に反対していた母方の祖父に反発するため、大学生のときに手に手を取って駆け落ちをした、って話を昔、聞いた。

 父も母も優しくて仲がよくて、あたしが生まれてからもずっとラブラブしていたっけ。

 あたしが呆れちゃうくらい、2人はすごく仲がよかった。

 結婚したら、あたしもこんな風にずっと幸せでラブラブでいられると良いな、なんて……思ってたっけ。

 本当に憧れだった、あたしの両親。

 けれど――死ぬときも一緒だなんて……

 ひどいよ、あたしを残して。

 どうしてあたしは一緒じゃなかったの?
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