初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】
「お店に――ですか?」

「うん。――ほら、お店のルール違反をたくさんしたから……」

 あ……ひょっとして、それで怒られるって思ってる……とか?

 シンさんの顔が申し訳なさそうな寂しい笑顔に見える。

「ダメだって言われたら、ちゃんと諦めなきゃいけないって分かってるんだ。ルール違反をしたのはぼくだからね。でも……」

「歓迎いたします」

 シンさんの言葉をさえぎり、あたしは考える前に言葉を出していた。

「今回のことは、お互いの内緒にしましょう」

 人差し指を唇に当て、あたしは悪戯っぽく笑う。

「温かい笑顔のご主人様が帰って来なくなったら、あたしも寂しいですから」

 ほろり、と正直な気持ちが転がり出たけど。

 少しおどけた物言いだったから、きっとシンさんにはリップサービスだって思われてると思う。

 ……なんだろう、ちょっとだけ胸が苦しい。

「シンさんが、偶然あたしと2日連続で出会った。――それだけです」

 偶然なら、ルール違反にならない。

「――うんっ、ありがとうっ!」

 あたしの意図を分かってくれたらしいシンさんは、すぐに大きく頷き、そしてすごく嬉しそうに笑ってくれた。
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