嘘と苺とショートケーキ 【短編】
◇追記・アンハッピーバースデー


オレ―――呉暁 海斗。


今日、可愛い彼女ができた。




「そういえばさ、月菜」


『ん?』



隣の席の人とペアになり、論題について話し合った結果を発表するという国語の時間。


オレは当たり前ながらも、隣の席の月菜と組んでいた。


先生の指示通り、高2にもなって机と机をくっ付ける。


普段なら若干恥ずかしいこの体勢も、月菜が相手なら全然苦にならない。


2人で見るように配られたプリントを机の真ん中に置きながら、オレは月菜に話し掛けた。


―――そして、冒頭に戻る。



「今日、誕生日だったよな」


『そうだよ。まぁ…朝からあんまり幸せな1日じゃなかったけどね』



苦笑する月菜を見ていたら、オレもなにかあげたくなった。


さっき聞いた話によると、七鴇さんと彰哉からはプレゼントを貰ったらしい。


……彼氏があげないってのは、おかしな話だよな。



「なにが欲しい?」


『えっ!?そういう意味だったの!?い、要らない!なんにも!』



声をひそめて口早に言い、月菜は千切れんばかりにブンブンと首を振った。


……ここまで拒否されると、なんかムカつく。



「………あ」


『な、なに?』



月菜がビクッと肩を揺らしたのがわかった。


……可愛くないこと言いながらも、やっぱちゃんと祝って欲しかったんだな。



『…か、海斗?』



不安そうにオレを上目遣いで見る月菜に、思わずきゅんとした。


俺ってこんなキャラだっけ。



「じゃあ、スリルをプレゼントってのは?」


『…す…スリル…?いや、要らな―――』



ちゅっ



『~~~っ!!!!』


「ははっ。顔、真っ赤」



授業中にキスなんて、そうそう出来ないじゃん?


得意気に笑うオレに月菜も釣られて笑い、どちらからともなくもう一度キスをした。






―――授業後、キスシーンを見ていた七鴇さんに殴られたのは言うまでもない。






【了】




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