見えない糸

「小学2年生くらいから、施設にいました。しずちゃん先生のいる施設です。

そこから学校に通っていました。

離婚して、お母さんも昼夜働いてたから、私を1人だけ家に残せないっていうのと、生活が大変だったから…

お母さんは1日おきに会いに来てくれました。

離れるのは寂しかったけど、私もガマンしました。

そのうち、会いに来てくれる日が少なくなってきて…

よく部屋で泣いていました…

なんかイヤな1年だった…

小学3年生になって、お母さんが施設に迎えに来てくれました。

一緒に暮らせるくらいになったよ、お母さんも早く紗織と毎日いられるように頑張ったよって言ってくれたのを覚えてます。

嬉しくて嬉しくて…

その時、お母さんの隣に、知らない男の人がいました。

一緒に家に帰ったけど、その男の人もいるままで、いつになったら帰るのかなーと思ってたけど、何日も家にいるので、私は本当にイヤでした。

お母さんは私の気持ちは判らなかったでしょうね…

ワガママを言ってる程度でしか考えていなかったと思います。

私は、その男と一緒に過ごすのがイヤで…

結局、施設に戻ることになりました。

小学3年生の終わり頃に、お母さんが施設に迎えに来ました。

あの知らない男は、いつの間にか新しいお父さんになっていました。

お父さんは欲しかったけど…私の欲しいお父さんは本当のお父さんで、新しいお父さんが欲しかったわけではないんです。

そんな大人の事情なんて関係ないんですよ。

私にとっては、お父さんお母さんの『古い・新しい』なんて無いんです。

本当の親だけでいいんです」
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