君を愛したい
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先輩と別れてから数分。
星来は未だに腕を離さない。
……いい加減、離してくれないとヤバいんだけど。
俺は気を紛らわすため、再び空を見上げた。
漆黒の闇は、まるでこの世に俺たちしかいないんじゃないかと思わせる。
そんな時、星来が静かに口を開いた。
「お兄ちゃん、空好きだよね」
「あー、まあな」
「どうして?」
どうして?
そんなこと聞かれたこともなかった。
少し戸惑いながら、俺はまだ空を見上げつつ口を開いた。
「なんとなく、かな」
「ふぅん……」
それで会話は終了。
でもな、本当は意味があるんだ。
空ってたくさんの星を抱きしめているみたいだろ?
だから、地上では叶わない俺の夢を、空は叶えてくれている
そんな錯覚に陥るんだ。
誰にも、特に星来には絶対言えない、俺の夢。