キスフレンド【完】
「姫、ありがと」
紫苑はクスッと笑うと、あたしの体をギュッと強く抱きしめた。
いつもより余裕のない紫苑。
あまりにも強く抱きしめられて息が苦しくなる。
「し……おん、苦しいよ……?」
「ごめん。ちょっとの間、こうさせて」
紫苑は腕の力を緩めると、あたしの肩に頭を乗せた。
そして、震える声で囁いた。
「姫はいらない子なんかじゃないよ。俺は……姫を必要としてるから」
その言葉が胸に重くのしかかって。
あたしも、紫苑を必要としてるよ。
誰よりも……紫苑のことを。
「……――っ」
あたしは紫苑の胸に顔を押し当てて、声を殺して涙を流した。