キスフレンド【完】


シロは最後の力を振り絞って目を開けてくれたに違いない。


もう衰弱しきっていて、声も出せなかったシロ。


片方だけ開いた目で俺達をジッと見ていた。


「ありがとう」って言いたかったか?


それとも「もっと生きたかった」って言いたかったか?


お前、一生懸命生きたよ。


一緒にいられた時間は短かったけど、お前と一緒にいられて幸せだった。


誰もいない暗くて静かな家に帰ってくるのが、ずっと嫌でたまらなかった。


だけど、シロがうちにきてからは家に帰るのが楽しみになったんだ。


玄関を開けると、お前がヨタヨタと近付いてきてくれるから。


『おかえり』って言うみたいに『ニャー』ってか細い声で泣いてくれたから。



俺は確かに、お前に救われたんだ。










< 207 / 363 >

この作品をシェア

pagetop