求愛
「挙句、検死の結果、警察になんて言われたと思う?」


道明さんは顔を覆った。



「アイ、死姦された痕跡があるって。」


そう言った彼の表情は、とてもじゃないが見られなかった。


想像するだけで身がすくむ。


道明さんの言葉はまるで懺悔しているかのようで、気持ちを汲み取ろうとするだけでも胸が痛んだ。



「何もしてやれなかった。
タカは今も本心では、そんな俺を許してないんだろうけどな。」


だって俺がアイを殺したも同然だから。


と、言った彼の顔は、悲しく歪んでいる。



「でも、タカも苦しそうだったよ。」


いつかの居酒屋で、タカは彼に対し、恨んでいる反面で忘れてほしくないと、矛盾した気持ちを抱えていることをあたしに吐露してくれた。


そして道明さんが、そんな自分に対して気を使ってる、とも。


複雑な想いが入り混じる。



「ねぇ、犯人はどうなったの?」


「翌日にはすぐに警察が捕まえてたよ。」


でも、と彼は言う。



「結局、起訴されても、裁判の間も、犯人は――吉岡は、罪を悔いることなんてなかったけどな。
いくら有罪が確定になったって、アイの無念は晴らせなかった。」


「じゃあ、今もその男は刑務所の中ってこと?」


あたしの問いに、だけども道明さんは首を左右に振る。

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