求愛
放課後になり、梢とふたり、街に繰り出した。


まぁ、これだけ頻繁に出没しているあたし達なので、知った顔を見掛けることは多いのだけれど。


声を掛けてくる男達と適当に言葉を交わし、ナンパを受け流して歩いている時、



「ねぇ、そういえば知ってる?」


梢は思い出したように問い掛けてきた。



「乃愛、最近男切ってるって話。」


あの乃愛が?


だって彼女は、男の数がステータスだと考えているようなヤツなのに。


確かに最近はそういった話は聞いてないが、でもありえない。



「何それ、嘘でしょ?」


怪訝な顔をしたあたしに梢は、



「マジみたいだよ。
何か、本気になった人がいるって。」


ひどく驚いた。


けれど、彼女は神妙な顔で眉を寄せて付け加える。



「相手、妻子持ちらしいけどね。」


「はぁ?」


不倫してるような男に本気になるだなんて、どうかしてる。


そんなのどうせ、向こうは遊びの範疇であって、面倒になったら捨てられるのがオチだ。


相手がどんなヤツかは知らないけれど、でも乃愛には呆れて言葉も出ない。


梢もあからさまに肩をすくめて見せる。

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