狼彼女のお気に入り



「これは………」



一体どうなってる…?



俺は目の前の状況に目を見開いた。





「げっ…」


「………。」



落ちつけ。



落ち着くんだ、俺。



『怒らない、睨まない、優しくすること。』



篠田に言われた言葉が頭を巡る。



ここでいつものように怒鳴ったら、早速破ることになる。



俺は思いっきり深い深呼吸をしてから、なるべく落ち着いて声をかけた。






「……何をしているんだ?」


「えっ?いや、あの……パーティー?みたいな…ね?」


「そ、そうなの!」



俺が来たことで、その場にいた女共は気まずそうに顔を見合わせる。



マズいと分かっているなら、最初からするなよ…



そんなことを思いながら、もう一度深呼吸をする。




「何の」


「えっと……アハハハハ」




俺は深いため息をついた。



柴原に呼ばれて来てみた教室は、これ以上にないほど散らかっていた。



机や椅子は散乱し、床にはペンキが撒き散らされている。



大方……想像はつく。



確か前にもこんなことがあった。



…行事前になると、変にはしゃいで、散らかすやつ。





「はぁ…」



逆に感心するよ。ここまですれば。



「……俺は何も見ていない。」


「へ?」


「お前らも暗くならないうちに帰れよ。」


「う、うん!」



本来ならば、もっと注意すべきなのだが…



何故だか、今日はそんな気になれなかった。








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